2013年9月14日(土)~11月24日(日)にかけて神戸市の六甲山にて行われる「六甲ミーツ・アート芸術散歩2013」に「そらのしらべ」という作品を出品しています。
 

六甲山を舞台に39組のアーティストたちが全54点の作品を展示するこの現代アートの展覧会。
私たちの作品は、この不思議な形をした建築の中にあります。

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これは「六甲枝垂れ」という自然体感展望台で、
自然の摂理や、循環機能を随所に取り込み、まるでそれ自体が一本の大きな木のような建築です。
晴れている日には関西の景色を一望することができます。

中からは、隣接したカンツリーハウスの風景がパノラマで見えるのですが、
冬にはこの風景の前につららのカーテンができるような趣があったり、
冬の間に作った氷を氷室にため、夏に六甲の風を利用して建築内で涼風を作るような
六甲の四季の自然と一体になったしくみを持っていて、とても気持ちのよい場所です。
 
 
さて、私たちMATHRAXの作品は、この建築の中心部、
スロープをどんどん下って行った「風室」という部屋にあります。

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まるで空がすぐそこにあるような吹き抜けの部屋には、
5匹の鳥たちがベンチの肘掛けの上に佇んでいます。

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このスズメ、ヤマセミ、ハト、キジ、ワシミミズクの、5匹の鳥たちの背中をなでてあげると、
小さい鳥から大きい鳥、それぞれ高音〜低音までのオルゴールの音を奏でます。

(もうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
 以前に制作したRhinon(らいのん)と同じようなしくみになっています)

モチーフとなった鳥たちは、
空と親和性がある生き物の力を借りることができれば…と、日本の野鳥を選びました。

 
▼アイデア時の鳥のスケッチtori_w

 
今回の音は、同じく六甲山にある「六甲オルゴールミュージアム」にて、
アンティークオルゴールの音を録音、サンプリングさせていただき、リアルタイムに生成しています。

これは、1900年ころアメリカのレジーナ社によって作られた
「オーケストラル・レジーナ6型」というディスクオルゴールです。

この櫛歯を当ミュージアムの学芸員であり、六甲ミーツ・アートのキュレーター補佐をご担当されている
内藤さんにはじいていただきました。

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また、今回使用した木は、褐色の美しい木目が特徴であるウォールナットを選びました。
建築に使用されているものが針葉樹のヒノキだったので、彫刻部分も同じものにするか迷ったのですが、
希に見かけるこの水面のような模様は、今回の空間に、微かに動的な要素を生んでいます。

ウォールナットを板材まで仕上げてくれたのは、いつもお世話になっている家具工房のくうちん工房さん。
お忙しいところ、こちらの意図を汲んですばらしい仕事をしてくだり、本当にありがとうございました!

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私たちの作品のコンセプトは、建築や空間のよさを活かし、溶け込むかのように「追加」されるもの、でした。
今回は、MATHRAXらしさを出すために、さらに電気の力も借りています。

私たちは電気も自然現象の一部だと考えていますが、さらにそこに人が関わることで、
電気によって姿を変えた音が空間に奥行きをもたらします。
小さな電子たちが木や人を伝って、この空間をさらに味わう媒体になってくれるというイメージです。

この場所で視覚、聴覚、触覚、嗅覚を開いて、
自分がどんな存在で、自然現象とどのような関係を持ち、どのような影響を及ぼし、また受けているのか…。
人もその世界の一部だと感じることができるような場所になればいいな、と思っています。

 
 

さらに、会期中18時からは、「ライト兄弟」というアーティストグループの方と
コラボレーションさせていただき、光と音を演出する空間を作り上げています。

照明デザイナーの伏見雅之さんは、
ずっと見ていると目に映るものの色をグレーにしてゆく、オレンジ色の低圧ナトリウム灯の光、
そして融氷水の水面の波紋を天井に映すハロゲン灯、
この2灯の光をコンポジションして光が地底から空へ登っていく様子を表現しています。

アイアンの筐体は、日比淳史さんの作品。
落ち着いた雰囲気の鉄の色が不思議と空間に馴染んで、もともとそこに存在していたかのような気持ちになります。

私たちは、その光に合わせて融氷水の音や、環境音を重ねたりしながら音で空間を作っています。
日が出ている時とはまた違った趣がありますので、ぜひ2つの違った世界を楽しんでみてくださいね。

▼作品「light and patio」
lightbrothersplayer]▲楽器や歌声で作品とコラボレーションしてくださった方々
 
ヒノキの香りにつつまれながら、氷室の冷たい空気が空へ昇っていくのと共に、
人々が音を空へと放つ様子は、私たちから見てもゆったりとしてしまう空気がありました。

現場で朝を迎える日も何日かあり、ひどい顔をしていた日もあったかと思いますが、
ちょうどお会いすることに出来た皆さんに率直な温かい言葉をもらい、疲れも吹き飛びました。

(場所と音に共鳴し、自ら笛や歌声でコラボレーションしてくださった方をはじめ、
 スタッフへの作品説明会では、お客さまが気を利かせてタイミングよく鳥たちを奏でてくれたり、
 夜の設営では、お客さま自身が携帯ライトで手元を照らしてくれたり…本当に有り難かったです)

同じく、六甲の方々には、作品制作のために親身になって協力して下さり、
一週間以上滞在させていただいた私たちとしては、本当に温かい気持ちになりました。

また、地域とアーティストの間をつないでくださったり、
自分たちが制作している中では気づかなかった、新しい見え方や考え方に気づかせてくださった
キュレーターの方々、およびスタッフの皆さまにも、この場を借りて感謝申し上げます。
 

作家さんも本当に素敵な方、面白い方が多くて、一緒に制作が出来てわくわくしました…!!
あらためて他の作家さんの作品の紹介もしたいと思います!
 
 
MATHRAX