2015年10月23〜28日、株式会社資生堂主催の「LINK OF LIFE さわる。ふれる。美の大実験室 展」が銀座資生堂ビルにて行われました。

MATHRAXは、資生堂の研究員の方と、東京おもちゃ美術館(NPO法人日本グッド・トイ委員会)さんとのコラボレーションで「language」という作品を制作させていただきました。
 
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photo MATHRAX

 
資生堂といえば誰もが知っている化粧品の会社ですが、
この展覧会は「さわる・ふれる」をテーマに、
研究員の方が自ら、資生堂の知見や考えをアートやデザインの形で表現・発信してみるという
斬新な試みもありました。

展覧会のディレクターである藤原大さんは、
今こそ社会のあらゆる場において様々なLINK(リンク)が必要だと考え
研究員の皆さんに「旅に出てください!」と声をかけたのだそうです。

この春、研究員のお二人が旅の仲間を探しに(コラボレーションのお誘いをしに)
MATHRAXを訪ねてきてくれました。
まるでRPGゲームのように…!^^
 
ここからは、いつもお世話になっているphotographer KENJI KAGAWAの写真でどうぞ。

 

銀座資生堂ビル3Fフロアの「language」

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「language」は木をメインに音・光・香りの効果を用いたインスタレーション作品です。

スペースにいる動物たち(ゾウ、サイ、ウマ)をなでると
ハープのような音が奏でられ、周辺に点在している花のオブジェがほんのりと光を灯します。

実は、人が動物をなでてあげることで、
その花からはふんわりと「ある香り」が漂うしくみになっています。
 
 

ゾウは高音、サイは中低音、ウマは低音の音を奏でます。

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作品には3つの花と、それに対応する3つの香りがあり
全ての香りが空間上でブレンドされると、バラの香りを感じることができます。

 ・ゾウ → ピンク色の花 → ドライフルーツの香り
 ・サイ → 黄色の花   → はちみつレモンの香り
 ・ウマ → 緑色の花   → グリーンハーブの香り

  →3つの香りがブレンドされるとバラの香りに!
 
バラの香りはもともと複雑な香りの成分を持っているそうで、
その中でメインとなる3種類の香り成分を
資生堂の香料の研究員の方が、人々に分かりやすい名前の香りに合成・調香してくださっています。

 
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今回、私たちもはじめて作品に取り入れた「香り」という要素は
普段から身の回りにあるにも関わらず、本当に不思議な存在でした。

配合量がわずか0.01%違うだけでも全く違う印象になるという厳密さを持ち
人々の気分を左右するだけでなく、身体そのものにも作用を及ぼします。

ちなみに今回の香りの成分は、女性らしさを引き出したり、メラニンの生成を抑える効果、
気持ちをリフレッシュさせてくれる効果もあるそうです。

また、記憶との結びつきも強く、
私たちは香りをかぐだけで昔の思い出を強烈に引き出されたり
瞬時に時間や空間をも超えるような感覚を味わったりします。

「language」のバラの香りは、人によっては全く違う印象として
記憶されているかもしれませんが、
今後も人々の意識下で、何か別の記憶とリンクしたり、
新しい記憶を作っていくのかもしれません。
 

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最後に、今回の展示のスペース構成をするにあたり、たくさんのお力添えをいただきました
東京おもちゃ美術館(NPO法人日本グッド・トイ委員会)さんのご紹介をさせていただきます。

今回、「スギコダマ」と呼ばれる大きなスギの木のオブジェ(造形作家の有馬晋平さんによるもの)をはじめ、
ヒノキのボールがたくさん入っている「たまごプール」、
リンゴの木の玩具や、床に敷くヒノキのパネルなどをお貸しいただきました。

 
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木育赤ちゃん広場 photo MATHRAX

 
今回の資生堂の展覧会は、女性はもちろん、化粧品にはあまり馴染みのない男性の方にも、
そしてお子さまも一緒に展覧会に来て頂けるような場にしたいという
会場構成の方向性がありました。

木の優しさを取り入れた空間づくりができたらいいね、というアイデアもいくつかあり
四谷三丁目駅にある東京おもちゃ美術館さんにコラボレーションのお願いに伺ったのでした。

 
上の写真は、美術館内にある「赤ちゃん木育広場」というスペース。
針葉樹の床板はそのまま座ってもほんのりあたたかく、香りも爽やかです。

お母さんも赤ちゃんも本当に穏やかな表情で、
ゆったりとくつろぎながら思い思いの時間を過ごしているのを見ていたら
まさに展覧会のイメージそのものが重なったような気がしました。

館長の多田千尋さんのお話によると、京都の枯山水に訪れた際、
時間を忘れていつまでもその場所でゆっくりと過ごす女性たちを見て、この空間を思いついたのだそうです。

作品の最終形態は、
動物がいて、花が咲いて、香りが風景をつくるような枯山水なのかもしれない…!と
ピンときたのも、この時だったのかもしれません。

 
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お借りしたスギコダマをもとにMATHRAXで制作した花の台座

 
今回はせっかくのコラボレーションということで、
コラボレーションさせていただく皆さんの担当要素が
少しずつ入り交じるようなスペースにしたいと思っていました。
そこで、普段は広葉樹を使用している私たちも、はじめて作品に針葉樹を使用してみることに。

動物をのせる台と花のオブジェ台はスギ、
花のオブジェにはオレンジ色が美しいビャクシンという木材を使用しています。

 
 
今回、館長さんからは、美術館の歴史や地域の人たちとのつながり、
林業と企業との連携、玩具を通した世界とのつながりなど、
幅広いご活動のお話を伺いました。

例えば「森や山に木を植えよう!」という活動の先に、
その木を活用するサイクルを考えなければ、というお話は
木を使って作品を作っている私たちにとっても、深く考えさせられるものでした。

突然のお伺いとお願いに、丁寧に対応していただきましたこと、感謝申し上げます。

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photo KENJI KAGAWA

展覧会最終日にモデルになってくださった来場者のお母さま、息子さん、
ありがとうございました!
 
 

今回、資生堂の研究員の方々と作品を制作させていただく上で
私たちは、お互いの研究内容(あるいは制作方法)、興味のあること、日々考えていることなど、
たくさんの意見交換をしてきました。

素晴らしいと思ったのは、研究分野は違えど、それぞれ切り口が違うというだけ。
各々の展望や作品への目標は同じ方向でした。

それぞれ別の職能を持つ人々が集まった時の話し合いはとてもエキサイティングで、
各々が持つ情報は、別の人の世界でも生き生きとしているように感じられました。

 
また資生堂の方は、人が自分(もしくは自分自身を含む他者)の肌にふれることが、
素朴な自己生命維持行為であるとともに、
コミュニケーションをする上でも重要な意味を持つことを教えてくれました。

その考え方は、私たちのこれからの制作方法にもたくさんの影響とヒントを与えてくれたと思います。
 
たくさんの人々とコラボレーションした作品「language」は、
最終的に『自分の「さわる・ふれる」行為が、光や音、香り等の異なる特性に変化し、
他者(自らを含む)に届く』という循環の世界を私たちなりに表してみたものとなりました。
皆さんにはどのように映ったでしょうか。

ぜひまたたくさんの方とこのような素晴らしいセッション、
そしてアンサンブルができたらいいなと思っています。

この場をお借りして、資生堂の中西さん、松本さん、東京おもちゃ美術館の多田さん、山田さん、
そして関係者の皆様に御礼申し上げます。
 
 

→languageのメイキングの記事はこちらからどうぞ。
 language〔メイキング〕

 
 
MATHRAX