株式会社資生堂主催の展覧会「LINK OF LIFE さわる。ふれる。美の大実験室 展」に出品した作品「language」のメイキングを少し紹介いたします。
→展覧会の様子はこちらの記事からもどうぞ。
language @LINK OF LIFE展
動物をなでることで花から複数の香りが漂い空間上でブレンドされる作品「language」
さわる・ふれる
資生堂さんにとって、人が肌に「さわる、ふれる」ということは、
研究の中でも大切な題材だそうです。
さわる・ふれるという行為は、
ものの様子を確かめるだけではなく、ものごととの情報を交換することでもあり
ある種のコミュニケーションとも言えます。
それは自分の様子(存在)を確かめることにもなり
素朴な自己の生命維持行為だということも伺いました。
私たちの作品のほとんども「触感」を伴うもの。
制作中、木材はもちろん、何か自分の気になる感触にふれたとき、
自身が生き生きとした気持ちになるわけがよく分かります。
写真は、今回、コラボレーションのお声掛けをくださった
資生堂研究員の中西さん(右)と松本さん(左)。
普段は「触感」や「香り」、研究の企画などに携わっている素敵な方です。
アイデア
自称「お見合いおじさん」と仰っていた展覧会のディレクター藤原大さんが、
研究員の方とMATHRAXのお互いの深層心理から、
作品の方向性を見出すためのワークショップを開催してくださり、
お互いの専門分野や考えにわくわくしながら、作品作りは始まっていきました。
今、初期のアイデアを見返すと、やはり一つの技術を要素に、
人と人がコミュニケーションをする方法を考えているようです…。
いつの日か実現してみたい案がまだごろごろしています。
技術を要素に、人と人がコミュニケーションをする方法を考えている
少しずつ空間が現実的に…でも常に現実と空想との綱渡りをしたい
実験
アイデアは出しつつ実験することが必須です。
香りをどのようにコントロールして香らせるか、ということも考えなければならず、
私たちの作業場は毎日香りでいっぱいでした。
花の形を考える際、木の板をうすく裂いたもので作ってみましたが
手触りを体験するには、繊細すぎます。
たくさんの子供にも来てもらえる展覧会として、もっと安心感のある要素に変更することに。
花らしきものが光って香ってきたら実際にどんな気持ちになるだろうか…初心に戻って確認
ワークショップ
実際の作業に入りはじめた頃、研究員のお二人にも工房に来ていただき、
木工ワークショップを行いました。
実際に手で何かを作っている時が、一番感覚が研ぎすまされるのと、
オーバーヒートした頭をすっきりさせてくれるような気がします。
何か迷ったら手を動かしているうちに分かっていたということも少なくありません。
アトリエでの作業
資生堂の方をお招きしてのワークショップは、
スギの板を重ねて厚みを作り、自分の思う通りの形に削ってみるというもの。
木のざらざら感、さらさら感、すべすべ感、やわらかさ、手の中におさまる気持ち良さ、
たくさんの要素を感じながら自分でコントロールしている時、言葉はなくなります…笑
お二人とも本当に丁寧に、素敵な形に仕上げてくれたので
この形をもとに、作品の花の台座の形を作らせていただきました。
集中しすぎていつの間にか日が暮れていましたが、素晴らしい出来!
おもちゃ美術館さんからすすめていただいた、香りのしない米ぬかオイルで仕上げ
展示
香りの補充
展示空間のあらゆる表情
実際に自分たちの手で作り、人に直接見てふれてもらうこと。
これはあらゆる情報を消化し、自分ごとにしてみるということだろうと思います。
何かを自分から世界に提示する時、
賛同してくれる人もいれば、別の意見を持っている人とも出会うと思います。
そんな中で自分の真意を確認してゆく作業は、
自分の中に世界とつながったある指針を作ることなのかもしれません。
これは、作品のよりよい手触りを追求していくことと平行しています。
それをたくさんの方々と共有することができたこと、そして充実した時間を過ごせたことに
今でも感謝の気持ちがいっぱいです。
MATHRAX