神奈川県立音楽堂のホールにて作品「ステラノーヴァ」を展示した様子を紹介しています。

映像についてはこちらのページでご紹介しています。

photo : kenji kagawa

ステラノーヴァ〔Stella nova〕は、「新星」という意味をもつ体験型のインスタレーション作品です。
「新星」という言葉は、まるで新しい星が誕生するようなイメージを想起させますが、そうでありません。すでに活動を終えた暗い星が、別の星の接近によって化学反応を起こし、明るく輝く現象をさします。かつて人はその様子を見て、新しい星の命が生まれたのだと想像したのだそうです。

この作品「ステラノーヴァ」は、惑星をイメージした円形のインターフェースに体験者が手を近づけたり、ふれることで音を奏でます。またその音は、周囲のキューブ型のオブジェにも呼応し、星のように瞬きます。

二人の体験者の奏でる音が重なり出会う時、その音は、宇宙に見立てたホールの空間全体に響き渡ります。この作品におけるステラノーヴァとは、人が他者との出会いによって新しく生まれ変わっていく時の音の現象をさしています。

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ステラノーヴァは、2015年に美ヶ原高原美術館で開催された展覧会のために制作した作品です。2021年の今、新型コロナウイルスのパンデミックにより、人に会って話をしたり、触れることも敬遠される日々が続く中、ぜひこの状況と作品をリンクさせるような展示計画ができればと考え、音楽堂のホールを宇宙に見立て、「舞台」と「客席」という離れた場所から、「音を通じて体験者同士がコミュニケーションを図るような空間」として新たにしつらえました。

展覧会は残念ながら新型コロナウイルスの感染症対策として無観客開催となってしまいましたが、記録撮影の体験モデルを依頼した盲導犬ユーザーの小倉慶子さん、盲導犬のブリスちゃん、加藤夏海さん、ダンサーの石神ちあきさんが、見事に作品の世界観を体現してくれました。彼女たちはそれぞれの視点から作品の解釈をし、いつもMATHRAX作品の中に入り込んで楽しんでくれます。

今回は、地球からあるステラノーヴァの現象を眺める傍観者という役回りを石神ちあきさんにお願いしたのですが、その傍観者が宇宙から何かを受け取って新たな創造へとつなげていく人の様相を素晴らしい形で表現してくれ、私たちも大変救われた思いでした。

その空気をしっかりと写真に捉えてくれた写真家の香川賢志さん、出演者の繊細な動きが音になって音楽堂に拡がる様子まで伝えてくれた映像のトーマス・ベズウィックさん、サム・キングさん。

今回の制作を全般的にサポートしてくれ、見えない来場者の方にも配慮した角のない展示台を制作してくださった美山工房さん。舞台でのインストールに不慣れな私たちにいろいろとアドバイスをくださった神奈川県立音楽堂の技術チームの皆さん、スタッフの皆さんに心より感謝申し上げます。

ステラノーヴァ Stella nova
作 家:MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕
形 態:サウンドインスタレーション
制作年:2015 –
写 真:香川賢志
映 像:トーマス・ベズウィック(監督・編集)、サム・キング(撮影)
出 演:小倉慶子&ブリス、加藤夏海、石神ちあき
会 場:神奈川県立音楽堂
協 力:美山工房

Stella nova [ 2015 – ]
Artworks [Installation] : MATHRAX〔Shozo Kuze + Mariko Sakamoto〕
Photograph : kenji kagawa
Movie Director / Editor : Thomas Beswick
Movie Camera : Sam King
Performance : Keiko Ogura & Bliss, Natsumi Kato, Chiaki Ishigami
Location : Kanagawa Prefectural Music Hall
Special Thanks : Miyama workshop, Kenji Kagawa

MATHRAX