2023年 1 月14日(土)より藤沢市アートスペースにて展示している《螺旋と点》についてご紹介しています。
photo by Junji Kumano
《螺旋と点》2023
制作年:2023
形態:インスタレーション
素材:木、樹脂、電子部品、LED照明
《螺旋と点》は、貝にふれながら、階段を降りていく体験型のインスタレーションである。今回の作品の要素となったのは、「階段」「みちしるべ」「貝」である。
藤沢に住む人に藤沢の印象を聞くと「海」と答える人が多かった。ならばと街から海へ向かう道を歩いてみると、道沿いに道標を見つけた。目の見えない人も江の島を参拝できるようにと、江戸時代の盲人鍼灸師によって建てられたもので、かつては48基ほどあったそうだ。彫られた文字は深く、丸みがあたたかい。たくさんの人がふれては読み、江の島を目指したのだろう。江の島を目前に、片瀬海岸の波打ち際に様々な貝が並んでいるのをみた時、これもどこか「みちしるべ」のようだと思った。
私たちは、生きているだけで、時間とともに進まなければならない。それは否応なしに始まり、今、自分の位置もよく分からないまま、ただただ続いていく。作品を展示した「階段」も、どこかその状況に似た身体感覚を起こさせる。思えば、このビルの「階段」も「貝」も私たちの「意識」も螺旋を描いているのだ。タイトルの《螺旋と点》には、体験者がさまざまな螺旋を行き来できるよう「全体と瞬間」という意味合いを込めた。
MATHRAX