2019年の夏に茅ヶ崎市美術館にて開催された展覧会「美術館まで(から)つづく道」。展覧会に至るまでのリサーチとして茅ヶ崎でのフィールドワークを行った様子を紹介しています。
2018年3月25日の第三回目は、盲導犬ユーザーの小倉慶子さんと盲導犬のリルハちゃんと共に茅ヶ崎を歩きました。表現者は、資生堂の香りの研究者である稲場香織さん。そしてMATHRAXの久世と坂本もこのチームに入れてもらうことになりました。この日は、雨と風が強い日でしたが、なんと海の香りがまったくしない不思議な日でした。
フィールドワークやワークショップの様子は、茅ヶ崎市美術館のブログでも詳しく紹介されていますので、ぜひそちらもご覧ください。(記事の下にリンクを記載しています)
photo: kenji kagawa
盲導犬ユーザーの小倉慶子さんとリルハちゃん
香りの研究者、稲場香織さん
梅雨というより嵐になりそう…
緑地には梅の実が落ちていたり香りのよいクチナシが咲いています
サザン通りを海に向かって歩く
小倉さんとリルハちゃんの歩みはどんどん早くなり…誰も追いつけないほどに
きちんと信号を待つリルハちゃん
でも赤や青の色で判断しているわけではないそう
茅ヶ崎サザンCのモニュメントの形を口頭で小倉さんに伝えてみる
宿泊できる国指定 有形文化財「茅ヶ崎館」
街中の香りを書き留める稲場さん
水たまりはちょっと苦手
緑地に戻ってくると不思議と傘を閉じたくなる
美術館に戻って気づいたことを感情マップに整理してみる
小倉さんとリルハちゃん、稲場さんと茅ヶ崎を歩くとこんな言葉が出てくる.
街中で香りが変化していく「グラデーション」、十字路での香りの「レイヤー」、雨の松林の「クリア」
今回のアートワークではその言葉を音にしてみる
小倉さんと坂本はグラデーションの音づくりに挑戦
稲場さんは太鼓の低音の上にラムネ瓶の高音をのせることで「クリア」な音づくりに挑戦
香りも同じような組み合わせで「クリア」さを表現することがあるそう
第2ラウンドではそれぞれが作った音を重ね録りして「道」を再構成してみる
見たり聴いたり嗅いだりしたものの記憶には、ある質感がある
その質感は、様々な感覚情報のるつぼだ
私たちはそこから何を取り出そう?
参加者プロフィール
小倉 慶子
盲導犬ユーザー/視覚障害者
1999年障害者手帳取得。同年、日本視覚障害者セーリング協会(JBSA)に入会。世界選手権大会3回出場、銅メダル2回獲得。現在、江ノ島の「ピッコラくらぶ」でも活動中。
リルハ
盲導犬
2012年8月9日生まれ。2014年11月、日本盲導犬協会横浜訓練学校卒業。同時に小倉慶子とユニット結成。2019年4月9日、病のため急逝(享年6)。
稲場 香織
資生堂グローバルイノベーションセンター 香料開発グループ研究員
千葉県生まれ。香料会社ジュニアパフューマーを経て、エバリュエーターとして香りの評価・開発、メーカー等への香料の提案、プロジェクトマネジメントを行う。2015年、Musée International de la ParfumerieのPrix de l’Odeur を受賞。
MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕
アーティスト、エンジニア、デザイナー
電気、光、音、香りなどを用いたオブジェやインスタレーションの制作を行うアートユニット。デジタルデータと人間の知覚や感覚を題材に、人が他者と新たなコミュニケーションを創り出す作品制作を行う。
第三回フィールドワーク&ワークショップ 参加メンバー
感覚特性者
小倉慶子(盲導犬ユーザー/感覚特性:視覚)
リルハ(盲導犬)
表現者
稲場香織(株式会社資生堂グローバルイノベーションセンター香料開発グループ研究員)
MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕(エンジニア/デザイナー/アーティスト)
コアメンバー
鎌倉丘星(株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ取締役/弱視・車椅子)
久世祥三(エンジニア/アーティスト/湘南工科大学教員)
坂本茉里子(デザイナー/アーティスト)
藤川悠(茅ヶ崎市美術館学芸員)
サポーター&リポーター
野呂田純一(公財)かながわ国際交流財団 副主幹
谷津光輝(湘南工科大学総合デザイン学科 久世研究室)
特別見学
原良介(画家)
町田倫子(付添い)
記録
香川賢志(写真)
金明哲(映像)
〈企画〉茅ヶ崎市美術館
〈主催〉公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団/公益財団法人かながわ国際交流財団
〈協力〉湘南工科大学総合デザイン学科/㈱インクルーシブデザイン・ソリューションズ
〈関連事業〉MULPA(マルパ):Museum UnLearning Program for All/
みんなで“まなびほぐす”美術館―社会を包む教育普及事業―
マルパ特設サイト
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