2022年9月24日(土)− 10月16日(日)、豊中市立文化芸術センターにて、開催された展覧会「光さす間に」にて展示された《光の依代》のご紹介です。
《光の依代》2022 The light dwells
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photo: Kenji Kagawa / Performance: Tomoyo Okada, Chiaki Ishigami
わたしに出会う
この作品は、天岩戸神話の中で祀られた「鏡」をモチーフにしたインスタレーションである。人が本来の清らかな姿に帰るという「祓(はらえ)」の要素を扱ったものであり、体験者は、芸能の祖神である天宇受売命(アメノウズメノミコト)となり、天照大御神を岩戸の外へと引き出すために舞う。
タイトルの「依代(よりしろ)」とは、神霊が依りつく物や人のことをいう。この展覧会では、人の意識の志向性を「光さす」様に見立てているが、「光」が依りつく人とは、すなわち、今を生きている者のことである。常闇の世界に光がさす時、またその光を自らに受ける時、それらの「あいだ」には何が起きているのだろうか。
《光の依代》は、「光さす間に」展に出展された5作品のうち、最後の5番目に構成された新作です。
この作品では、「わたし自身に出会う」という部分に注目しています。
〈展覧会「光さす間に」の作品構成とコンセプト〉
1、石の声を聴く …いしのこえ
2、誰かに声をかける …とこよのうたよみ
3、推進力に乗る …うつしおみ
4、出会い交差する …ステラノーヴァ
5、わたしに出会う …光の依代
天岩戸神話は、太陽の女神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、須佐之男命(スサノオノミコト)暴虐により岩戸にこもってしまったのを、八百万の神々が様々な知恵を絞って岩戸の外へ引き出し、世界に再び光を呼び戻すお話です。
《光の依代》では、「わたしに出会う」というコンセプトから、天岩戸神話の中で祀られた「鏡」をモチーフとしました。
神話の中では、天照大御神が岩戸の中から外の様子をうかがうために少しだけ顔を覗かせる場面があります。その瞬間、八百万の神々は、祀ってある鏡を天照大御神の目の前にかざし、その姿を映し出します。その時、天照大御神は鏡の中に、自分自身ではなく、高天原の主宰神であり、宇宙万物を創造する神、天御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の姿を見たとも言われています。この場面を今回の展覧会「光さす間に」のために再構成したものが《光の依代》です。
作品中の「鏡」のオブジェは、体験者がその円の形状をなぞるように触れること、それによって奏でられる音によって、オリジナルの「祓(はらえ)」の所作を引き出します。その所作がまるで舞のようになり、時間を紡ぐことで、しだいに鏡には体験者の姿が映し出されるように変化していきます。体験者が鏡の中の「わたし」に出会う時、頭上の太陽のオブジェも岩戸から顔を覗かせるように光輝いています。
今回の制作にあたり、舞台からコンテンポラリーダンス、地唄舞まで、さまざまな身体表現を研究されているダンサーの岡田智代さんには、大変お世話になりました。能とも繋がりのある地唄舞についていろいろとご教授いただき、天照大御神の役として、この作品における「岩戸を開ける」振りについても丁寧に考案いただきました。
また、コンテンポラリーダンサーの石神ちあきさんには、天宇受売命役として、天照大御神の声を聞き、声をかけ、神がかりの舞によって御心が一つになっていく様子を表現いただきました。
身体表現や神話の人物のリサーチから意見交換まで、幅広くお力添えをいただきましたお二人をはじめ、作品の制作と実現にご協力をいただきました関係者の皆様に重ねて御礼申し上げます。
MATHRAX